刀人―巡りめく戦乱の中で―
「無礼な。何者です!」

「おっと失礼。俺様は山賊の長、重祢だ。見た所輿入りの最中みたいだが、まぁ諦めな。何せ天下の重祢<シゲネ>様が全てを頂くのだからな」

口元を吊り上げて豪快に笑う目の前の男、重祢は赤髪の髪を無造作に生やし目の片方に眼帯を付け継ぎ接ぎした短い着物を身に纏った異様な格好をしている。
腰元に帯刀しており、それが見かけ倒しでないことは雰囲気で悟る。

「こんなに大勢だと狩るのも一苦労だな」

「…………」

酷く楽しげに言うその姿に、祭は口籠る。金品を攫うっだけならそれ程時間が掛かるようには見えない。金目になりそうなものは御輿の前後に割り振られている。

――となると金品が目的ではない可能性が高い。


「……此処に居る者を殺すのですか?」

「何故そう聞く」


不躾な質問にギロリと目を光らせ祭を見下げる。間違いなく空気が変わった。
答えによっては行動を起こすと言っているようなものだ。

殺気にたじろぐ様子のない祭に、興味があるのか重祢は静かに答えを待つ。


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