刀人―巡りめく戦乱の中で―
「……気に入った。野郎共!!!周りの人間には一切手を出すな。金品だけ掻っ攫ってとっととずらかるぞ!!!」
『おーーーーーー!!!!』
重祢の一声は鶴の一声らしく、周りに散らばっていた野郎共が一斉に集まり片っ端から金目になりそうなものを物色し始める。
最後尾の様子を見に行くのか重祢が少しの間祭の側を離れると、その隙を見計らって一人の老父が祭の元へと近付いてきた。
「姫様」
小さい頃から面倒を見てくれていた私の元側近であるじぃが心配そうに言葉を掛ける。七十近くになるじぃは側近を引退して幾分も経つが、この度は私の事を心配して大変な山道にも関わらず付き添ってくれたのだ。
「じぃ。この様なことになって誠に申し訳ありません。……私めはこの場所で山賊に襲われ攫われたと四十万様にお伝え下さい」
「でも、それでは……」
じぃが言いたい事は分かっている。私にも考えがない訳ではない。私の保身よりも、まず考えなくてはならないのは国の事。
「……これを」
「へぇー、こりゃ上等な小太刀じゃねーか。売れば結構な値がするぞ、これ」
いつの間に戻って来たのか、懐から差し出した小太刀を覗き見する重祢の声を無視して、祭は話を続ける。
元々、私は須江長の娘。賊程度に見くびられてなりますか。
『おーーーーーー!!!!』
重祢の一声は鶴の一声らしく、周りに散らばっていた野郎共が一斉に集まり片っ端から金目になりそうなものを物色し始める。
最後尾の様子を見に行くのか重祢が少しの間祭の側を離れると、その隙を見計らって一人の老父が祭の元へと近付いてきた。
「姫様」
小さい頃から面倒を見てくれていた私の元側近であるじぃが心配そうに言葉を掛ける。七十近くになるじぃは側近を引退して幾分も経つが、この度は私の事を心配して大変な山道にも関わらず付き添ってくれたのだ。
「じぃ。この様なことになって誠に申し訳ありません。……私めはこの場所で山賊に襲われ攫われたと四十万様にお伝え下さい」
「でも、それでは……」
じぃが言いたい事は分かっている。私にも考えがない訳ではない。私の保身よりも、まず考えなくてはならないのは国の事。
「……これを」
「へぇー、こりゃ上等な小太刀じゃねーか。売れば結構な値がするぞ、これ」
いつの間に戻って来たのか、懐から差し出した小太刀を覗き見する重祢の声を無視して、祭は話を続ける。
元々、私は須江長の娘。賊程度に見くびられてなりますか。