刀人―巡りめく戦乱の中で―
訝しげな表情で男は祭と同じ目線になるようにその場にしゃがみ込む。

「もし、殺せば?」

男の声が一段と低くなり、強い殺気を向けられる。
眼光は鈍く光り、それでいて鋭く尖った凶器のようだ。

「今すぐこの場で舌を噛み切ります」

何時でも行動に移せるよう、祭は口を噤んで真剣な表情で相手の目を見つめた。

「…………」
「…………」

男は考えているのか、視線を合わせながら沈黙を保ったまま。祭もその視線を逸らす事なく見つめ返している。



これでも、一国の姫だという誇りがある。

せめて、自分の命と引き換えにしても、この者達の命を守りたい。

例えその価値が私になかったとしても、例え相手と刺し違えたとしてもこの者から皆を守らなければなららない義務が祭にはあった。自身に興味があるのなら、それを活かすしかない。交渉で済むならそれが一番良い。



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