刀人―巡りめく戦乱の中で―

「吉良、のっ……う、そ、つきっ」

きっと、こうして心から涙を流せるのもこの場所以外ありはしないのだろう。

吉良と過ごした、この地だけが許してくれるのだと。



枯れた筈の涙が再び浮き上がってきて、吉良の為に、そして自分の為に頬を伝っていく。
月は欠けることなく何時までも私を照らしているのに、夜は徐々に日の光へと移り変わって行く。


太陽が昇る頃には、しっかりとした足取りで立ちもう下は向いていない。


……いてはいけないのだ。


それでも尚、こうして立っていられるのは“一国の姫”という呪いに近い言の葉が体の中を蝕んでいるから。

小さい頃からの教えが皮肉にも今の私を支えているのだ。


残されたたった一つのこの地を守るため、そして今亡き父君のために自分の使命を果たすことを心にそしてこの地に誓ったのだった。
< 7 / 21 >

この作品をシェア

pagetop