刀人―巡りめく戦乱の中で―
何故、私を一緒に連れていってくださらなかったの……吉良っ。


“姫様は此処で待っていて下さい”


私が行くと言っても頑なに譲らなかったのは、それが負け戦だと知っていたから?


“勝利を手にし須江長の国に戻ってきます”


そんな悲しそうな顔をして、信じろと言う貴方は何て残酷なんでしょう。




“無事に帰ってきた暁には……”



その先の言葉が彼の口から紡がれることはなかったが、包むような彼の優しい抱擁に気持ちが全て伝わってきた。お互い願掛けのようなものだった。

祈るように、毎朝、毎晩。太陽に、月に願いを込めて。

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