ソレデモワタシハアナタヲアイス
「用ってそれだけ?じゃ、私、帰るから」
不機嫌なサキはカバンを持って立ち上がった。
「ちょっと待てって!女バスの部長、困ってんだよ!ちょっと協力してくれたって良いだろ!?」
俺がとっさに掴んだ腕をサキは容赦なく振り払った。
「そんなに心配ならソラが女装でもして助けてあげれば!?私、関係ないし!っていうか女バスの部長なんか知らないし!」
珍しく本気で機嫌が悪いらしくサキが大声を出した。
さっきまで聞こえていたクラスメイト達の雑談の声がいつの間にか止んでいる。
けれどなんとか説得をしたい俺は焦りからそんな事を気にする余裕なんてなかった。
「ちょっと手、貸してくれって言ってるだけだろ!?なんでそんなに意地んなってんだよ!?」
負けずに大声を出した俺にサキは奥歯を噛み締めた顔で無言のまま教室から出て行こうとした。
俺はそんなサキの腕を今度は振り払われないようにもう一度、掴んだ。
「待てって!おまえちょっとはカレシの頼みくらい聞けよ!」
教室の沈黙に気付いたのは全てを言い終えてからだった。
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