ソレデモワタシハアナタヲアイス
―――なんでカレシの俺じゃなくて関係ないヤツらが食ってんだよ―――
さすがに俺だって気分は良くない。
さっきから俺に断りもなくサキは馴れ馴れしく声をかけられたり、写真を撮られたりしている。
いっその事、首から「カレシが居ます」と書かれたフリップでも下げてくれれば良いのになんて小さい事を思ってしまう。
―――そんな事したら売り上げ落ちるって真由子が騒ぐか―――
俺は頭からツノを生やして怒る真由子を想像した。
「マユちゃん、買い出し行かないとマズイかも。予想より人、並んじゃってるから」
クラスメイトの一言にツノの生えていない真由子が慌てて材料に目を向けた。
「…ヤバイ…絶対足んない」
真由子は余裕のない目で振り返った。
「隆太!ビラ配り行ってる男子集めて買い出し行ってもらって!女子は今ある分なくなったら整理券配るから手空いてる人は印刷手伝って!」
ノリにノッている真由子はこのピンチを乗り切る為に、テキパキと回避策を打ち出した。
「美咲、私、印刷行って来るから続けててね」
真由子は自分が居ない間にサキが逃げ出さないようにくぎを刺してから急いで出店を離れた。
「空人は買い出し行く?」
隆太は少し面倒臭そうだった。
「俺パス。サキの手伝いするから」
朝からずっとサキとの別行動を余儀なくされていた俺は、やっとサキと一緒に居られる時間を手に入れた。
「飽きねぇ?」
「とっくに飽きてる」
そう言いながらもサキは真由子に言われた通り、手を動かしていた。
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