ソレデモワタシハアナタヲアイス
ピンポーン。
インターフォンが鳴った。
「美咲、出て」
キッチンから夕飯の後片付けに追われているお母さんの声がした。
私は言われた通り、玄関に向かった。
「お届け物です。本郷美咲さんのお宅でよろしいですか?」
玄関のドアを開けると、花屋さんと思われる男性が、大きな黄色い花束を抱えて立っていた。
「はい…私ですけど…」
自分宛てに花束が届いた事のなかった私は、初めてのシチュエーションに少し戸惑った。
「こちらにサインをお願いします」
差し出された伝票を見て、私は自分の目を疑った。
「お誕生日なんですよね?1ヶ月も前からご予約、承っていたんですよ。おめでとうございます」
接客業のプロなのか、その笑顔は完璧だった。
「あ、有難うございます」
私は、サインをした伝票と引き換えに、花束を受け取った。
「有難うございました」
無事に仕事をまっとうした花屋さんは、静かにドアを閉めた。
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