ソレデモワタシハアナタヲアイス
「美咲、たぶん教室の前で入れなくなってたんだと思うよ」
たまたま部活で校庭を走っていた俺に、同じく部活で走っていた隆太が近付いて来た。
俺は返す言葉がなく黙ったまま走り続けた。
「空人、美咲にどうして欲しいの?」
―――美咲にどうして欲しい?―――
正直、そんな事は考えていなかった。
俺はただ好きだと言っただけで、それは美咲に何かをして欲しかったワケではない。
ついでに言うならあの時、俺は美咲に「付き合って欲しい」とは言っていない。
美咲ならその性格上、「だから何?」と返して来ても不思議ではない状況なのに、彼女は「考える」と答えた。
彼女は俺とかけ離れた頭で俺よりも先を見ていたに違いない。
そしてきっと今、悩んでいる。
俺が突発的に放った言葉に真剣に向き合ってくれている。
「空人、どこ行くの?」
隆太の声に我に帰ると校庭のランニングコースから離れかかっていた。
「ヤバイ…俺、何も考えてなかったかも…」
今更になって自分の無鉄砲さに気付かされる。
美咲に告白をしただけで、俺は達成感を得ていた。
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