ソレデモワタシハアナタヲアイス
「放して」
全てを聞き終えた美咲はうつむいて静かに口を開いた。
微かに声が震えている。
美咲の冷たい言葉に我に帰った俺は、返す言葉もなく言われた通りに手を放した。
美咲の制服の腕の部分にはクッキリと掴まれていた跡が残っている。
相手が女の子なのに俺は怒りに任せて力加減を忘れていた。
そのまま引っ張って来たのだからきっとかなり痛かったに違いない。
「美咲…」
俺の呼び掛けを無視して美咲はクルリと向きを変えて走り去って行った。
取り残された俺はただ美咲の後ろ姿を見届ける事しか出来なかった。
最低だ。
俺は自ら最低の状況を作り出してしまった。
きっと美咲は謝ったってそう簡単には許してはくれないだろう。
俺は遅いと分かっていながら２つ目の後悔をした。
< 93 / 435 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop