甘い香り
叔父さんは、それから
ゆっくり語ってくれた。

優之介さんは実は
重い病気でほとんど学校には
行けていなかったらしい。

特に生徒会を抜けてからは
病気が悪くなって、
結局亡くなった。

あたしは聞きたくなかった。
別の人の話なのに、
どこかお兄ちゃんを重ねてしまう。

「だけどさ、あの人
最後まで明るかったよ。」

「!」

「いつもニコニコしてた。
きっと死ぬの怖かったろうにな。
多分陽鞠さんが側にいたからだろうけど。」

「…。」

「なあ、涼香。
涼太顔には出さないけど
きっと辛いぜ?
なのにお前は支えてやらなくていいのか?」

ハッとした。

そうだよ、あたし何やってんだよ。

こんな時こそあたしがそばに
ついていてあげなくちゃ。

ふてくされてる場合じゃない。

あたしは唇を少し噛みしめた。

「…ねぇ、叔父さん。
あたし涼ちゃんの側ついてていい?」

「ついててやりなさい。
きっと喜ぶ。」

「うん。」

あたしはお兄ちゃんの病室へ戻った。
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