白は花嫁の色
やっと瞼が重たくなるには、今日が始まって十二時間も経つ頃。
ようやく眠りにつこうとした体を、インターフォンの音が包んだ。
正座をして待った。
小刻みに震える拳を握った。
紺のスーツを着た結城は腰を下ろすなり前説もほどほどに話し出した。
こちらはまだパジャマなのだけど…
「僕は…、今更になりますが…実は忍さんに一目惚れをしていました。うちの感謝祭でです。
婚約を考えた時、一番に忍さんが、忍さんしか浮かばなかったんです。結婚するなら忍さんだと」
目を逸らせなかった。
昨日、姉ちゃんを見つめていた目。
――…感謝祭。
俺は…
……本当はずっと自分を誤魔化してきた。
記憶の扉を開けたくない。開けたらきっとそこには――…
結城の言葉全て聞きたくないのに一言も聞き逃したくなくて耳を澄ました。
息遣いさえ感じられるように。
今から彼が話すことを、きっと俺は知っているのだろう……