白は花嫁の色
熱燗は素手で持てば、じんわりと皮膚の芯からやけどしそうになる。
未成年というだけではなくて、飲んだことがないけど甘臭いから酒は苦手だと思う俺はガキなんだろう。
…だって勿体ないから俺は多分成人しても酒は飲まない。
なぜなら、せっかく姉ちゃんと居るのに記憶が曖昧になるなんて嫌だからだ。
お盆を片手に皿をさげたり、注文をとったり運んだり、……ばたばたと一時間が過ぎて――
たった一時間だけど、やっぱり部活の後にはきついなと、
まだ十代の癖にひしひしと感じてしまう。
「ありがとう、おじさんにもよろしく」
「ああ、サンキュお疲れ」
籠にバックを乗せてサドルに腰を落とし、右足をペダルに置く。
おやすみと言おうとした俺を遮り、「時給千円にしないか?」と久保が言ってきた。
いつもへらへら笑っているのに、眉間に皺を寄せて唇を強く結び真摯な瞳をこちらに向ける。
――それはそれは中学生らしくない顔。
「ありがとう、姉ちゃんを見たからだよな?いいんだ、働かせてもらえてるだけ感謝してるし十分だよ」
白い歯を見せ笑った。
正直そうやって言ってくれるだけありがたいと思えた。優しい友達に心の中でお礼をした。
車輪は家へと回る。
足に力が入るのは、それだけ早く家に帰りたいという気持ちのせい。
想いは力になる。
好きな気持ちはペダルを漕ぐ足に力をくれる―――
ハンドルを握るこの手が、
月明かりで繋ぐ違う手が、
――どうかさびしい手ではありませんように、と。