白は花嫁の色

携帯は基本料だけなら、学割があるので安いと言う。また同じ会社ならば通話料も無料らしい。

なるほど、長電話がタダなら魅力的である。

しかし、連絡をとりたくてたまらない人は家に居るので、携帯なんて必要ない。

毎日会える。
顔を見て話せる。
それって凄い幸せじゃないか?

会いたい時に連絡しなくても会えるんだ。


雑草が生えっぱなしの場所をわざと通る。落ち葉に紛れ無責任に捨てられた汚いゴミが落ちている。


「てか何、ついて来て堀さ、俺もう帰るんだ、ばいばい!」

後ろからお喋りを止めない堀がうざったくて言った。


夕日に染まった空は赤だったけれど、夜の黒とが混じり合ってきて不気味な紫色をしている。


早く帰りたいのに――


「一緒に帰ろうよ!」と堀が吠える。

…鬼みたいに顔を真っ赤にさせて怖ぇ。目なんか怒って潤んでるよ、耳まで赤いとかまじ実写版・鬼だろ。

特殊メイクなんて必要ない。

――と、ツッコミたかったが、これ以上冷たくしたらキレそうだったので、

鬼の隣を渋々チャリを押すはめになり……捕虜みたいだ。


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