不器用なカノジョ。
俺はなんていうタイミングで起きてしまったのだろう。
こんな偶然、起こりうるのか。
もしこれが、本当に偶然だというのなら。
いるかどうかも分からない神様を恨む。
だって、こんな『偶然』残酷過ぎる。
「キョンちゃん…もしかしたら気づいてるかもしれないけど…」
そこでひろは言葉を切った。
ああ、サイアクだ。
たぶん、今日は人生で最もサイアクな日であろう。
だって、自分の好きな人が自分じゃない違う人に告白するところを聞いてしまうのだから。
「私、キョンちゃんが…「千尋」
耳をふさぎたい衝動に駆られながらも、それができなかった俺の耳に入ってきたのは好き、という言葉ではなくキョンちゃんがひろの名前を呼ぶ声だった。
「それ以上は言わないでほしい」
「…どうして?」
ひろの声があまりに切なすぎて。
胸が痛かった。
「千尋にそれを言われたら、俺…ダメになると思うから」
「ダメになる…?」
「あのな、千尋。
俺、お前に言ってないことがあるんだ」
やっぱり、キョンちゃんはひろにあのこと、隠してたんだ。
「俺…彼女がいるんだ。
もうすぐ…結婚、すると思う」