王子様は寮長様
「蒼斗、遅い。」
「悪かった。ありがとうな、猛。」
蒼斗が外に出ると、車に寄り掛かっていた猛は身体を起こす。
「…楽しかったか?」
「あぁ。」
「どうかしたか?」
蒼斗の様子に猛は聞いた
楽しかった割には冴えない表情だ。
「…九条の母親は病死だってさ。」
「?あぁ。知ってたろ?蒼斗。」
「あぁ。…父親は…よくわからないらしい。」
「そう、椎菜ちゃんがいったのか?」
「あぁ。…いるのかいないのかよくわからないって。…まぁ、そうだろうな。」
蒼斗の顔が厳しくなる。
「…なぁ、蒼斗。気持ちは揺らがないのか?」
猛は以前、蒼斗に聞いたセリフをまた口にした。
蒼斗は猛の方をむこうとしない。
「…揺らがない。」
「本当に?」
蒼斗はすぐには答えない
猛は深くため息をついた
「…揺らがないなら、期待させるようなことするなよな。」
「わかってる…。」
わかってるんだけどな、と蒼斗は呟き、悲しそうに小さく笑った。