王子様は寮長様


「相馬先輩、今日はありがとう。凄く楽しかった。夏の思い出が増えました。」

「俺も楽しかった。ありがとう。じゃぁ、猛が待ってるから行くな。」



先輩は戻ろうと一歩踏み出し、足をとめた。



「そうだ…、九条さ。」

「はい?」

「九条のお母さんは、どうして亡くなったんだっけ?」

「母ですか?病気です」

「そっか。……お父さんは?」

「…さぁ。よくわからないんです。いるのかいないのか。」



嘘ではない。“父親”とは会ったことがないのだから。


先輩はふぅんと言った。

どうしたんだろう、急に

夕方の話を思いだしたのかな。



「ごめんね、急に変なこと聞いて。じゃぁまた」

「はい。おやすみなさい」

「おやすみ。」



先輩が見えなくなるまで見送った。


寂しいな。

先輩の姿が見えないと凄く寂しい。


本当は行って欲しくない

でもそれは私が言うセリフではない。



あぁ~!

早く夏休み、終わらないかなぁ!!






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