王子様は寮長様


「野上に直接聞くからいいよ。」

「先輩っ。」



私は咄嗟に先輩の腕を掴む。

先輩はそんな私をじっと見た。


どうして?相馬先輩が怒ってる。



「…これは何?」

「あっ、これは…」



先輩は低い声で私の首筋に触れた。

うそっ…。

見られた。



「…どうしたの?これ」

「これは…」

「キスマークだよね?」



低く、感情を抑えるような声で先輩は聞いてくる



「野上がつけたの?」

「…これは…あの…」

「野上がつけたの?」



ゆっくりとした言い方に観念した私は小さく頷く


先輩は再び玄関へ向かおうとしたので、私はそれを止める。



「先輩っ、待って…!」

「離せ、九条。」



いつか聞いたことのあるあの冷たい口調と表情の相馬先輩。


私は先輩の前に回り、抱き着くように先輩の身体を止めた。



「やめて。お願いです」



先輩…、とギュッと服を掴む。
しばらく立ち尽くしていた相馬先輩が軽く息を吐く。



「…っ…、ごめん。」



私の涙声に先輩は小さく謝る。



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