私は嘘で出来ている。
「先生、同じ大学の市河真昼さん」


今度は私の方を向く。


「こちら、僕…を育ててくれた学園の園長先生」


「初めまして」


そう言うと先生はニコニコと会釈で返してくれた。


「急でびっくりしましたよ」


有本君が三つの湯呑みに緑茶を注ぐ。


「だって、最近進ちゃん来てくれなかったじゃない。住所も変わったって言うし、心配で先生が来ちゃったわよぅ。でも良かったわ。彼女と喧嘩するくらい元気で」


先生はアッハッハッと脳天気に笑った。


私達は笑えなかった。


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