溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「あのっ相模さん」

思わず、その背中に声をかけてしまって。
振り返った相模さんは私の声に驚いていた。

「あの、濠が…今日の事をお願いしたのっていつですか?」

早口になる言葉が気になりながらも、どうしても聞きたくて、周りの目なんて忘れて聞いていた。

「…金曜日だよ」

それがどうかしたのか…と不思議そうに私を見る相模さんに、笑って首を横に振って。

朝から疲れた気持ちを抑えながら席についた。
すぐにでも仕事にとりかかろうとするけれど、気持ちが身体を制御していて。

思考すべてが、今知った事実に支配されて…。

小さくため息をつくしかできない。

今晩の食事会の準備を金曜日には既に終わらせていた濠。
フランスに行く前の忙しい時に、私の事を考えていてくれた。

そんな濠が抱えていた想いが私に伝わってきて、つらくなる。

コンクールで私が大賞を受賞した事を知ってどんな気持ちになったんだろう。
長い付き合いの中で、私の…ううん、二人の人生が大きく変わるだろう事を、他人の相模さんから知らされて。

どんな風に傷ついたの?

私が黙っている毎日を、何を思いながら…。

私を抱いてたの?

濠の大きな心と愛情で私を包みこんでくれる優しさが当たり前に思えて、傷つくに違いない濠の心から目をそらしていた私。

やっぱり。

濠はまだまだ私以外の人と幸せに人生を送る事ができるって思えて仕方ない。

お見合いに気持ちが揺れたように、濠はその事がわかってるはず。

私じゃなくても…愛する女性を側に置く事はできるって。

…わかってるけど。

そんな事、わかってるけど。

左手の薬指で存在感を主張する指輪の嬉しさを与えられた後になった今。

決心したはずなのに。

私は濠から離れられるのか…もう自信がない。
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