溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「なあ、透子が集めてた石鹸、失くなってたけど…どっかにやったのか?」
濡れた髪をタオルで拭きながらキッチンに入って来た濠の言葉に、
あー、気づいてしまったのか…と緊張してしまう。
お茶をグラスに注いでいる事をいい事に、背中を向けたまま。
「こないだ会社の後輩が遊びに来た時にあげたの。気に入ったって言うから」
「…全部?」
「そう…全部。そろそろ違う香りの石鹸に変えようかと思ってたから、ちょうど良かったの」
何気なく、軽く言いながら。
不自然な表情じゃありませんようにと思いながら振り返って、そっとグラスを濠の前に置いた。
「あの薔薇の香りの石鹸、俺も気に入ってたのにな」
…知ってるよ。
いつも私の部屋に来た時に、薔薇の香りに包まれるとついつい長湯してしまうって言ってたし。
未来に何があるのか…私に未来なんてあるのかなんて考える事すらできなかった15歳のあの日から。
濠は薔薇の香りを気に入っていた。
『この香りをずっと探してた』
20歳で再会した私に、そう囁いてくれた日から始まった濠との新しい人生。
とても幸せで楽しくて。
その幸せの香りから溢れる愛すべき思い出が、これからの私の支えになるに違いない。