溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
既に濠が記入するべき欄には記入が終わっている。

整った字を見て、出張中の濠を思い出して…会いたくなる。

「あとは透子ちゃんが書いて…保証人の欄を埋めるだけなの」

それまでの明るい声はそのままだけど、微かに躊躇いがちなニュアンスを聞きとってしまって顔を上げると。

私を不安げに伺う弥恵さんと目が合った。

「弥恵さん…?」

「あのね…。透子ちゃんが…嫌ならいいんだけど」

言いにくそうに言葉を探す弥恵さん。
テーブルの上で合わさっている手が震えてる。

一体何を気にしてるんだろ…。

「この保証人の欄に私に記入して欲しいって濠くんと有二さんに言われたの…。

あ…もちろん最初は断ったのよ。私なんて透子ちゃんと血が繋がってるわけでも知り合いだったわけでもないから…」

慌てて言う弥恵さんは、お茶をぐっと飲んで小さく息をついて落ち着くように…しばらく目を閉じてた。

ふっと目をあけた時、覚悟を決めたように光が揺れたように見えた。

「私は…透子ちゃんの家族にはなれないけど、竜臣くんが抱えていた透子ちゃんへの愛情がどれほど強かったかのかは一番わかってる。
側にいたくても叶わなかった悲しみもわかってる…。

代わりに…竜臣の代わりに署名させてもらえないかしら。

私も…透子ちゃんの幸せを見守りたいって思うのは我が儘かもしれないけど…」

か細い声だけど、弥恵さんの気持ちの強さは視線に表れている。
不安げだけど、じっと私を見つめたままそらさない。

濠と有二ぱぱが弥恵さんに会った一番の目的は、弥恵さんにこの気持ちを私に言わせる事だったのかな…。

ふとそう気付くと、ほんわかと暖かい流れが体中に溢れ出るように思えてくる。

私の知らない間にどうしてこんなにびっくりするような仕掛けをしてしまうんだろう。

私が考えてるよりも深い想いで、私の為に動いてくれるあの二人。

なんて…愛すべき二人。
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