溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
小学生の時に、母親が再婚した。
私が産まれてすぐに離婚してからずっと女手一つで私を育ててくれた。
小さかった私には、母の苦労の本当のところは理解できてなかったと思うけれど、時折見せていた寂しい表情だけはよく覚えている。
『はじめまして』
そう優しく言ってくれた男性…有二パパとの暮らしが穏やかに始まって、母さんの表情も明るく安心したものに変わっていった。
美容師としてお店を経営している有二パパは、母さんとは高校の同級生だったらしく、偶然にお客としてやってきた母さんと再会してから。
あっという間の結婚だったらしい。
そのあたりのいきさつはあまり聞いた事はないけれど、高校時代お互いに初恋に近い想いは抱いていたらしく、未だに恋愛中の雰囲気を纏う二人に運命が作用したんじゃないかと思ってる。
幸せそうに有二パパのお店を手伝う母さんを見る度、最初から運命に従っていれば…。
有二パパと結婚していれば良かったのにって思う。
あ…そうなると、私はこの世に存在してなかったのか…。
私が産まれるにはどうしても、あの人の存在が必要。
些細な記憶でさえ残っていない父親。
私に命を授けてくれた父親。
思う度に震える身体をそっと抱きしめて、悲しい想いが消えるのを待つ…。
濠に抱きしめてもらえれば…すぐに乗り越えられるのに…。