*銀狼-ギンロウ-*
今日でカイは退院。
でもカイの記憶は元に戻ってくれない。


戻らなくてもいいと思ったりもする。

だってアタシにとってカイはカイ。
それは変わらない。


でも無性に昔のカイに会いたくなる。
アタシが好きだった、カイに。



「カイ、これ最後の荷物」

アタシはカイに荷物を渡す。

退院の日、初めてカイの父親がカイを迎えに来た。
黒のポルシェにカイは荷物を乗せる。


「サヤカ、色々ありがとな」

「うん…」

「ごめんな。思い出せないままで」

アタシはそんな言葉を聞きたいわけじゃない。


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