童話少年-NOT YET KNOWN-
「…………どういう意味だよそれ」
紗散の問い掛けが、早口になる。
気が昂った時の、彼女の癖のようなものだ。
「どういう意味って、そのままだけど?」
対して雉世の笑顔は相変わらず。
見ているだけで背筋に寒気が走るようだ。
「自分が作り出した、って、……オニ、を?」
涓斗でさえ、一見冷静なようで、そのなぜか紫がかって見える瞳は、緊張に揺れている。
「まぁ正しくは、作り出す手伝いをしただけだけどね。しかもアレは、僕の見たものとは少し違う」
「……………………なんで」
弥桃だけは、早口でも、声が震えても、平静を装っても、揺らいでもいなかった。
その代わりに、いつもは眠そうにしているか、大好物を映して眠そうにしながらも輝いているかしか見た目に表れないその視線は、真っ直ぐと、雉世を見ていた。
探るように、と言った方が正しい。
だが、探るにしては不躾で、遠慮がなく、むしろなにもかも突き通して掴み取るような気がした。
「なんでそんなこと、俺達に話してんの」
「……………………賭け、かな」
「賭、け?」
「まぁ、………………僕ね」
その一瞬だけ、雉世の瞼が僅かに伏せられた。
言葉を選ぶように、しかし、選ぶ言葉の選択肢が無いのを知っているかのように。
「僕、テロリストなんだ」