童話少年-NOT YET KNOWN-



「ねぇ、全然関係ない話なんだけど……」
「ん、なに?」
「……『鬼』のことでね、ちょっとわかったことがあって」

なぜ今その話なんだ、という視線が、少女の猫のような大きな眼からあからさまに注がれているのを、ひしひしと感じた。
しかし話さないわけにはいかない。

「わかったこと。って」
「うん……この間、鬼を見た廃工場、あったでしょ?」
「あぁ、……きびだんご争奪戦。」
「火薬工場だったとこだろ?」
「そう、それ。そこが、隣に移った新しい工場の、倉庫に使われてたみたいで」
「倉庫?」
「そう。……それと、最初の強盗事件で盗られた金が、闇市場の武器商人との取引で使われてるって、ネット上で噂になってるんだ」

外壁から崩して徐々に核心に近付きたがるのは、雉世の癖なのだろうか。
時たま、聞いている側が苛立つほどに、遠回しに物を言うことがある。
その代わり、ただ要点だけ簡潔に述べられるよりも理解はしやすいのだが、せっかちな彼女にとってそのなかなか要領を得ない話し方は、あまり好きでなかった。

「どーゆうことだよ? 何言ってるか全然わかんねぇ」
「だから、つまり……」

雉世も最近になってやっとその、止まることを知らない単純明解な質を分かってきたのか、彼らしくもなく結論を急ぐように、言った。


「鬼道はもしかしたら…………、大規模なテロを、計画してるかもしれない」



< 62 / 135 >

この作品をシェア

pagetop