Parting tears ~another story~
第十一話 幸せだった頃
 美久が隼人に悪巧みを持ちかけ、俺と結麻の仲を引き裂こうとしてきたことがあった。俺は結麻を愛しすぎて夢中だったから、絶対に誰にも俺達の仲を引き裂くことは出来ない、大丈夫だという自信に満ち溢れていた。それに、結麻とたまには些細な喧嘩もしたけれど、それでも俺は毎日幸せだったんだ。

 走馬灯のように駆け巡る記憶――。

 結麻が側にいる月日はあっという間に流れ、付き合って一年目には、お揃いの指輪をプレゼントした。それは、シンプルなシルバーリング。そのお揃いのリングには、将来俺と結婚してくれというプロポーズの意味を含めたつもりだった。結婚する相手は結麻しか考えられない。毎日同じ部屋で生活をし、毎日一緒に眠りにつく。そんなふうに想像しては夢心地になったものだ。それと、俺の側で嬉しそうに、何度も薬指で光るリングを見ていた結麻が愛しくて堪らなかった。 
 
 そうだ、プラネタリウムを見に行った後だったと思うけれど、俺達は十年後のお互いに手紙を書き、河川敷にタイムカプセルを埋めた。結局二人で掘り返すこともなかった。今でもあるのだろうか……。確かあの手紙に俺は……。いや、思い出すのはよそう。あれはあのまま埋めておいた方がいい。今更俺が一人で開けても何の意味もないのだから。


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