Parting tears ~another story~
第一話 一目惚れ
 俺が結麻を初めて見たのは十三歳、中学一年生の時だった。

 その頃の俺は、部活もせずただ何となく中学校生活を送っていた。

 そんなある日のこと、学校の帰り道、意味もなく遠回りをして河川敷をぼんやり歩いていた時、川の側に隣の中学校の制服を着た女の子の後ろ姿が見えた。

 あれは確か、美久と同じ中学校の制服だよな。
 それは、小学校で仲が良かった美久が通っている中学校の制服だった。

 よく見ると、女の子の近くには小学校低学年くらいの男の子が四人。そのうち一人の小柄な男の子は泣いている。三人の男の子は体格も良く、何やら小柄な男の子に怒鳴っている。

 仲良く遊んでいるようには見えない。もしかしていじめだろうか。
 俺は側にある桜の木にもたれ、ぼんやり様子を見ることにした。もし喧嘩になれば、止めに入ればいい。

 三人の男の子は、泣いている男の子に向かって行き掴みかかったのだけれど、制服の女の子が素早く三人の男の子の頭にげんこつをした。すると、三人の男の子は泣いている男の子を置き去りにしたまま走って行った。女の子は泣いている男の子の頭を撫で、しゃがむと何やら声をかけているようだった。女の子が、いじめられていた男の子を助けたのだろうということが遠目にも分かる。男の子が泣き止むのを待ち、やがて立ち上がると、女の子がこっちに振り返り歩き出した。

 俺はどうしてかは分からないけれど、急いで木の影に隠れ、少しだけ顔を出すと彼女の方をこっそりと見た。その瞬間、俺の息が止まる――。

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