Parting tears ~another story~
第四話 自己嫌悪
 隼人が結麻に出逢ってから、隼人から聞く話しだけが唯一得られる新しい彼女の情報だった。どんなに隼人が美久に頼んでも、特に俺には会わせたくないと云っていたらしい。どうやら俺が結麻を好きになるかもしれないと、美久が不安がっていると云う。けれども、もし今西だけを会わせれば、俺に嫌われるのが怖いとも美久は云っていたらしいのだ。美久は彼氏がしょっちゅう代わっているのに、そこまで頑なに結麻に俺を会わせたくないなんて少し不思議に思う。

 俺はずっと結麻が好きだった。たった一度しか会ったことはないけれど、それでも忘れることが出来なかった。それに、隼人に話しを聞かなかったとしても、結麻が優しい性格だということも知っている。あの日、いじめられていた小学生を助けていた結麻。あの日の光景は、映画のワンシーンのように脳裏に焼きついていた。

 更に月日は流れ、確かあれは――高校三年の時だったと記憶している。

 夜は男三人で集まることが多く、その日は隼人に呼び出され、俺と今西が隼人の家に行った時だった。

 いつもはテンションの高い隼人がベッドに腰掛け、しばらく黙っている。
 隼人はきっと何か大事な話しがあるんだろうと思ったので、俺と今西は隼人が話し始めるのを待っていた。

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