ももいろ
ももいろーなないろ・1ー

【ヒモ・1】

カーテンから差し込む日差しが眩しくて、あたしは目を覚ましたが、

「ウッ…気持ち悪い…」

また布団に潜った。

ちょっと飲み過ぎたな…

時計に目をやると9時30分。

3時間しか寝てない。

寝不足だし酒抜けてないし頭痛いし気持ち悪いし、お店休んじゃおうかなと布団の中でもぞもぞしながら、今日来店予定の指名客の事を考えた。

今日予約入ってるのは、13時から鶴田さんだけだっけ…

3人も4人も予約が入っていたら、しんどいからゴメンナサイだけど、珍しく一人か。

鶴田さんなら楽だし、終わったらあがろう、そうしよう。

「ああ、ホントに気持ち悪い」

あたしはベッドから這い出し、溶けそうになりながらカーテンを閉めて日差しを遮った。




「サツキちゃん、酒クサ!」

部屋に案内するなり、鶴田さんは鼻をつまんだ。

「うん…ごめん。まあ、座って」

あたしは鶴田さんの上着を預かりハンガーに掛けながら、顔をしかめた。

大声出されると頭に響く。

鶴田さんはベッドに腰掛けて、持ってきた紙袋から次々とパンを取り出した。

「サツキちゃんの好きなメロンパンとか、チョコクロワッサンとかアップルパイとか、たくさん買ってきたんだけど、その様子じゃ食べられそうにないな」

おいしそうな匂いと、テーブルに並べられたパンを見て、ウッ…と思ったが、

「大丈夫。一緒に食べましょ」

あたしは無理矢理微笑んだ。

鶴田さんは、ソープランドに高いお金を払って来ているのに、何もせずに帰るタイプのお客さん。

初めて付いたときは、小洒落た感じの人だけど高級店に来るには年齢的に若そうだから、よその地方から来た人が奮発しちゃった感じの一見さん、もしくは誰かに連れてきてもらったのかなと思ったけど、お店を経営しているらしく、接待で誰かを連れてきたらしいのを知って驚いた。

「これがソープランドか!うわ、お風呂と部屋がつながってる!」

なんて最初はキョロキョロしていたけど、あたしが仕事を始めようとしたら、何もしなくていいからいろいろ話そうよなんて言ってきて、それ以来、月に1度の割合で顔を出してくれる。
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