ももいろ
「ホストで使うくらいなら、うちで可愛がってる貧乏なバンドマン達に使ってあげて欲しいよ」

鶴田さんがタバコをくわえたので、あたしは火をつけた。

「バンドマン?あ、鶴田さんのお店の」

「お店じゃないって。ライブハウス」

あたしは音楽に疎いので、ライブハウスとかよくわからない。

そういえば前、バンドやってバイトやって苦労してる若い子達の話を聞かせてくれたことがあったなあ…

「鶴田さんだって、ここで遊んでるじゃん。自分こそその子達に使ってあげたら」

あたしはチョコクロワッサンをかじりながら言った。

うん、ちょっとウッてなるけどやっぱりおいしいな。

「俺はここで、サツキちゃんの綺麗な顔を拝みながら、くだらない長話をしてストレス解消!」

「ありがとう。じゃああたしも、お酒飲んでホストに絡んでストレス解消ってことで」

鶴田さんは首を横に何回も振りながら残念そうに、

「こんなパンで喜んでくれる素朴なクールビューティーだと思ってたのにサツキちゃん、ホストで豪遊なんて、しかも絡み酒なんて、イメージ崩れる」

と言った。

素朴なクールビューティーって…変なの。鶴田さんやっぱり面白い。

「一人でやけ酒しても楽しくないから。一緒に暮らしてた友達、風俗上がって彼氏と暮らしてるし、嫌なことあったときとか一人でどうしたらいいのかわからないもん。ストレス溜まりっぱなしで」

少し考え込んだ後、鶴田さんはいいことを思いついたように言った。

「サツキちゃん一回ライブ来てみたら?ストレス発散にはもってこいだよ」

ライブ…

「あたし、そういうの行ったこと無いんだけど」

「楽しいって絶対。俺が保証する。そうだ、ちょうど今日ウチでライブあるんだよ、どう?今一押しのバンドも出るし。ああ、でもお店夜遅いんだよなあ」

「お店は、今日は鶴田さんが帰ったら、あたしもあがるつもりだからいいんだけど…ライブって夜やるものなの?」

「夜だよ。よし、じゃあ決まりね。チケットは俺のおごりだから!」

鶴田さんは嬉しそうにメロンパンをほおばりながら、いろんなバンドについて語りはじめた。
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