ももいろ
「たっだいまーぁ」

…!

司くん、なんでこんな時間に帰ってくるの?

「あ、サツキさんお風呂上がり。頭ガシガシ拭いてない?拭いてないね?なら、よし」

司くんはリビングに上機嫌で入ってきた。

「お、おかえり。今日、バイトじゃないの?」

顔を合わせたくなかったのに。

「今日はぁ、ライブぅでしたぁ」

司くんはあたしの隣にどかっと座った。

「…酔っぱらってる?」

「ちょーっとね」

ふふふふふん、と嬉しそうにしている。

「初めて見た、司くんが酔っぱらってるの。あ、そうだ、鶴田さんは元気?」

司くんは首をぶんぶん横に振った。

「今日はオーナーんとこじゃ、ないよー。ちょっと、おっきいハコに呼んでもらった」

ハコ?わけわかんないけど、司くんが嬉しそうに喋ろうとしているから、質問せずに続きを聞くことにした。

「緊張したけどぉ、うまくいったから、よかーった。CD、いっぱい売れたんだよ。ワンマンも、夢じゃなーい」

でろーん、と軟体動物のようにソファの背もたれにもたれかかって、司くんはゆらゆらしている。

「そう、よかったね」

「うーん、よかーった」

満面の笑みで返事をする司くん。

「バンド、うまくいってるんだね」

今は、とても一緒に喜べる気分じゃないから、あたしは営業スマイルで司くんに言った。

「がんばってね。じゃあ、あたし寝るから。おやすみ」

ソファから立ち上がろうとすると、司くんに腕を掴まれ、また座らされた。

「な、なに…」

「サーツキさん、元気、なーい」

司くん…目がすわってるよ。

「そんなことないよ…」

「そぉ?」

司くんはうーん、と考え込んでしまった。

「俺さぁ、居酒屋でバイトしてるじゃん?」

「?うん、そうだね」

「バイトの時はぁ、お食事を提供するのがお仕事、なんですぅ」

司くん、喋り上戸?何が言いたいんだろう。
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