蜜林檎 *Ⅱ*
触れる手

彼の気持ち

昨夜の樹は、皆の前で
確かに杏に告げた・・・
 
『結婚しよう』
  
その全く予期せぬ言葉に
杏の心はずっと囚われていた。

泥酔した彼が発した言葉は
本気なのだろうか?

以前二人は、一度
結婚の約束を交わした。

しかし、姉百合と樹との過去
の関係。

二人の間に子供がいるという
事実に私達は、別れを選んだ。

あの日交わした約束は

今はもう無い・・・?

杏は、お店の片づけを一人
黙々と進めていた。
 
テーブルを拭いている杏の元
に雅也がやって来た。

「おはよう、お父さん
 空瓶は全部、あそこに
 まとめてあるけど
 いいかな?」

「ああ、ありがとう
 なんだ、アン・・・
 眠れなかったのか?」
  
「ううん、眠ったよ・・・
 朝の光で目が覚めて
 しまったから
 片付けてたの」
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