蜜林檎 *Ⅱ*
無口で単独行動をしていた百合
に優しく接してくれた人。   

「ユリちゃん
 打ち上げまで居て大丈夫?」
  
「うん、少しだけ、顔を出して
 先に帰るわ
 
 もう粉ミルクだし
 シンちゃんに任せておけば
 大丈夫だから」

浮かび上がるステージ

百合の胸は高鳴る。

百合は、ステージの上に立つ
樹の姿をあの頃と同じように
見上げた。
  
昔、愛した男性(ヒト)は

今も、その場所で

キラキラと輝いていた。
 
感動した百合の瞳から

一粒の綺麗な涙が頬を伝うのを

杏は見つめた。
  
こうして東京公演は

無事に幕を閉じた。
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