蜜林檎 *Ⅱ*
寝返りをうつ

杏の髪に優しく触れる樹・・・

未来の無い愛に、杏をこのまま
 
繋ぎとめていては

・・・いけない。

樹はベッドから起き上がり
杏の傍を離れ、ベランダに
出て煙草を吸う。

真っ暗な夜空に、煙が漂うのを
じっと見つめていた
 
樹は、杏と別れる決心をする。

反対する雅也から杏を奪う事は

・・・樹にはできない。

樹と別れる事がどれ程

杏を傷つけ、悲しめるか・・・

それを思うと、樹の胸は
張り裂けそうに苦しい・・・

『何度、俺は、大切な人を
 失ってきただろう・・・
   
 もうひとつ、痛みが増えても
 大した事ではないだろう?』

樹の胸は、杏を失う悲しみに
押し潰されそうになる。

『大の男が
 
 なんて情けない・・・』
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