蜜林檎 *Ⅱ*

抱きしめたい

樹の携帯電話に何度かけても
電話は繋がらない。
 
樹の部屋に一人きり・・・

杏は、戻って来ない樹を
待ち続けた。

夜は、どんどん更けていく。

広い部屋に一人きり

・・・こんなにも寂しい。

その時、ドアを開錠する音が
聞こえた。
 
「おかえり・・・イツキ?」

樹の傍へ歩み寄る杏の瞳に
映った光景、それは

玄関先で見知らぬ女性と激しい
口づけを交わす樹の姿だった。

「・・・イツキ」

相手の女性は、モデルのように
背が高く長い黒髪がとても
綺麗な人・・・
 
彼女は杏の視線に気がついた。

「イツキ・・・誰?この子」

「・・・さあ、知らない」 
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