蜜林檎 *Ⅱ*
樹は杏を見ることなく

彼女だけを見つめて
 
頬に手を翳し、彼女の唇を奪う

「どうして、こんなことするの
 ・・・イツキ」

立ち尽くし、樹を真っ直ぐに
見つめる杏の瞳から
涙が零れ落ち、その顔は
どんどん苦痛に歪んでいく。

杏から
一瞬だけ目を逸らした樹・・・
 
杏を真っ直ぐに見つめて
吐き捨てるように言う。

「悪いけど帰ってくれないか
 
 ここはもう、おまえの
 来るところじゃない」

「・・・イツキ?」

「いい加減にしてくれよ
 暇つぶしに、ちょっと遊んで
 やろうと思っただけなのに
 昔の女の妹だって・・・
 つまんない女に
 引っかかったもんだぜ
  
 思い出したくも無い過去を
 思い出さされただけでなく
 聞きたくも無い話を聞かされ
 て、本当どうでもいい
 面倒なんだよ・・・」
 
杏の目の前にいる

この人は誰? 
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