蜜林檎 *Ⅱ*
樹は、洋服をソファーに置き
傘を持たずに慌てて家を出る。

携帯電話を手に持ち、杏に電話
をかけるが繋がらない。
  
ちょうど、その頃、杏は雨に
濡れた姿で駅に立ち

瑠璃子からの電話に出ていた。
 
電話の向こう

騒ぐ声が聞こえる。

「アン・・・今何処?家?
 南と仕事帰りに偶然会って
 今飲んでるんだけど
 
 おじさんのお店
 行ってもいいかな~駄目?」

瑠璃子の声に被さる蒼一の声が
聞こえた。

「アン、一緒にのもうぜ」

「ルリ、ごめん・・・
 私今、外なんだ・・・」

「ごめん
 イツキと一緒だったの?
 邪魔しちゃったね」

杏は、涙声で
瑠璃子に聞いてもらう。
 
「ルリ・・・
 イツキとは、もう逢えないの
 さっき、別れたから・・・」
< 47 / 275 >

この作品をシェア

pagetop