蜜林檎 *Ⅱ*

ながい夜

「イツキ、あなたを愛してる
 ・・・・・・ごめんね」

黒いベッドに身を沈め、眠る
樹の瞳がゆっくりと開く。

杏の声が聞こえた・・・夢?

『杏・・・
 どうして、俺に謝る?』

時計を見つめた樹は、眠りに
ついてから、まだ一時間程
しか経っていない事を知る。

とても、寝苦しい夜。

樹は目を閉じ、眠ろう

眠りたい・・・
 
そう、思えば思う程に
どんどん眠気は消えていく。

体を左右に、何度も寝返りを
うちながら

時は、ゆっくりと進む。
 
全く眠る事ができない樹は
ベッドから起き上がり
冷蔵庫からビールを取り出して
夜空を見上げて飲んでいた。
< 72 / 275 >

この作品をシェア

pagetop