蜜林檎 *Ⅱ*
樹は杏を見つめて、一歩ずつ
彼女に近寄る。

『やめて・・・お願い
 ・・・来ないで』

樹は杏を優しく抱き寄せた後

強く、強く抱きしめる。

そして、告げる。

「逢いたかった・・・
 おまえを愛してる」

杏の胸に、樹の声が突き刺さる

『私も貴方を愛してる
 
 一番伝えたい言葉を・・・

 私は言えない』

樹の手が杏の頬に触れ
口づけを交わそうとした
その時、杏は顔を逸らした。

「イツキ、ごめんなさい」

樹を真っ直ぐに見つめて
杏は言う。

「ごめんね」
 
「杏・・・
 どうして、俺に謝るの?」
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