蜜林檎 *Ⅱ*
蜜の味

蜜の味

「アン、どうかした?
 顔が赤いけど、熱でも
 あるんじゃないのか」

助手席に座り、シートベルトを
する杏の額に蒼一の手が触れる

「熱は、無いみたいだね」

「バイト仲間に勧められて
 お酒をほんのちょっと
 飲んだからだと思う」

本当は、違う・・・

樹に強く抱きしめられた杏

彼の温もりが

今も、杏の全てを支配する。

彼の残り香が・・・

二人は黙ったまま、車は
見慣れた風景を走る。
 
そして杏は蒼一と共に
実家の前に立ち店のドアを
開けた。

「おう、ソウ、よく来たな」

久しぶりに聞く雅也の声。
 
店へ入ることを戸惑う杏に
雅也は言う。

「アン、おかえり」

雅也のおかえりの言葉は
杏の胸をうつ。
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