淡い記憶

水泳部

   -----夏になれば、いくらだって泳げる。  

まだ、冬の制服を着ている自分を、不思議に思いながら、
陽一郎は昨年の夏を思い出す。  

近辺の海水浴場は、人でいっぱいで、
人のいない沖に出ると、流行りの水上バイクとウインドサーフィンなどで、
とても泳げない状態になっていて、
少し遠出をして人の少ない海を思いっきり泳ごうと、青木と陽一郎は計画を立てた。

 金もないので、サイクリングで適当に場所を見つけて泳げばいいと考えていたが、
遊泳禁止のところでは、泳げない。
一応遊泳可能な場所を目当てに、サイクリングは決行された。
 4時間くらいで目的の場所に到着し、
すぐに海に飛び込んだ。
工場などの立ち並ぶ家の近くの混雑な海とは違って、
水も澄んでいて沖に出ると、何メートルもの深さになったが、
澄んだ水は魚まで見えるほどだった。

「陽!」
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