どこかで誰かが…
「ちょっと見てくるから、待ってて!」


様子を見に、ゆっこが校内へと入って行った。


すると、

「さっき言ってた“勘違い女”のことだけどさ…」

この時とばかりに、言い訳をはじめる大沢。


「友達の彼女の友達で、何回か会ったことがあるだけだからな!別に告られたワケじゃないから、断るのも変な話だろ?つきあいもあるしさあ…」

「なら、先に帰って来ちゃって大丈夫だったの?」

「彼女が来てるから!って、振りきって来たに決まってんじゃーん。これでもう、むこうも分かったよ、きっと!」



試合で疲れているはずの大沢が、走って駆け付けてくれた時、佳菜子の胸は“キュン”とした。


それまでにも大沢の優しさには、身を持って感じることがあった佳菜子。


大袈裟な口調が嘘っぽさを漂わす大沢だが、その言葉以上の行動や、ほんの些細な態度にさえ、佳菜子はいちいち感動することがある。

例えば…

道路を歩いている時、気が付けばいつも大沢が車道側を歩いていたり、
下りのエスカレーターに乗る時は、大沢が先に乗り込んで、
上りのエスカレーターでは、必ず先に佳菜子を乗せると、自分は一段下に立ち、片足を佳菜子の立つ段に掛け、二人の目の高さを合わせるのだ。

と同時に、佳菜子のスカート丈への、他人の視線の妨げ役もこなす…

その密接度はかなりのものだが、大沢の手は手すりに置かれ、佳菜子の身体に触れていないため、少しもいやらしく見えない。

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