どこかで誰かが…
「もう帰るだけだろ?あとは俺が運転するよ。」

「ん。…つーかさ、熱海にさ、十国峠ってあるんだけどさ、」

「まだどっか行くの?」

めんどくさそうに言う清瀬だったが、

「せっかく遥々と来たんだしさ…ケーブルカーがあるんだけど、俺、乗って行ったことなくて、」

「!(乗ったことがない?…てことは…)行く!私も行きたい!(私とが初めてってことだよね!)」


そんな佳菜子の気持ちを知ってか知らずか、

「じゃあ、ふたりで行ってくれば?」

頭をかきながら言い放つ。


「え?」

「俺、クルマで寝て待ってるからさぁ。」

「でも…(気を使ってる?)」

「体力温存しとくよ。つか、眠いし!」

「よし!じゃあ行くか?」

「うん。ごめんね清瀬。」

「…キモいぞ。早く行け。」


おかげで、
今日という日は佳菜子にとって、春休みの二人での良い思い出と、三人での楽しい時間を持てた一日となったのだ。


そして、とうとう帰り道…

約束通り、そこからは清瀬が運転することになり、
後ろのシートを陣取り横たわって眠る片桐を見ては、こう言った。


「おまえとイチャつくんじゃなかったのかよ」

「ふふっ。それじゃ爆睡できないでしょ…あそこまで。」

「…だな。これからバイトだもんな。」

< 305 / 433 >

この作品をシェア

pagetop