どこかで誰かが…
「ごめんね。私も運転できれば良かったよね。」

「いや。どうせ怖くて任せられないよ。」

「!」

「なに?どうかした?」

「ん、なんでもない。(大地くん爆睡してる!清瀬には気兼ねしてないんだ…)」


佳菜子は、片桐が清瀬を信用していることを悟った。


十国峠へ向かう時も、

「あーみえて、気が利くんだよなアイツ。」

なんて感心していたし、

戻って来て、車内で熟睡している清瀬を見て、

「もう少し寝かしとこ。」

と、気を使っては、しばらくして慌てて起きてきた時、

「運転席で寝るなよ。身動きとれなかったじゃんか。」

そんな言葉とは裏腹に、買っておいた飲み物を渡した。


「起こしてくれれば良かったのに。」

「事故られても困るから。」

「ごめん。でも、もう大丈夫。」

「ホントだろうなぁ?俺はマジで寝るぞ。」

「いーよ。」

「…おし、じゃ、帰りまっか!」

「で、十国峠はどーだった?」

「良かったよ。なぁ、」

「うん。清瀬も来れば良かったのに。」

「彼女ができたら来てみるよ。」

「おっと!ちょっと寝たら素直になったか?」

「ちっ、早く乗れや!」


そんなやりとりがあったことを、助手席で思い返しては、ほくそ笑む佳菜子だった。

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