どこかで誰かが…
本当の恋のエピソード
４年の月日が流れた――

「ジンさん、独立、おめでとうございます。」

「ありがとう。これからもよろしく頼むね、佳菜子ちゃん。」


高校生の時、従姉に連れられ訪れた時から、ずっと佳菜子のヘアースタイリングを担当してくれている“仁”が、自分の店を出すことになった。


「それにしても、佳菜子ちゃんが結婚の報告なんて、俺もオヤジになるはずだぁ。」

「チョイ悪なね。」

「一番の誉められ言葉です。さすが分かってらっしゃる。」

「当然です。何年の付き合いだとお思いですか？」

「それはこちらのセリフです。この長い間、僕がどれだけ佳菜子ちゃんを見てきたことか…なのに僕以外の男性を選ぶなんて。」

「よく言う。」

「本当ですよ。毎回、僕好みの女性に仕上げさせてもらってたんですから。」

「え〜、ジンさん好み？」

「もっと積極的にアピールするんだった。」

「上手いな〜。…でも確かに私、ジンさんのお陰なのか偶然なのか…今思えば、ジンさんと出会ったあの日から、人生が変わったような気がします。」

「でしょ！僕の手に掛かったら」

「魔法にでもかけられたみたいに、なんだか自信まで付いちゃって…」

「そんなこと言っても、その瞳に僕は止まらなかったんだよね？」

「ジンさんには昔から彼女がいたでしょ！」


思い起こせばあの日、
サロンから出てすぐに、まだ名前も知らなかった片桐と目が合い…それからと言うもの、それまで気付きもしなかった気持ちを知ることができ、昔の恋にも火がついたと思えば、運命的な再会を果たして、さらに本当の愛を知ることとなったのだ。

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