愛のため息
『はい、熱いから気をつけて』



「ありがと、いただきます」



タカちゃんはミイがマグカップをしっかりと受け取るのを確認してから、手をはなして、右隣に座った。



そんなタカちゃんを見て、目に涙が浮かんだ。



『・・・ミイどうしたの?・・・もしかして、また?』




「うん、ごめんね」




タカちゃんの言葉に涙ぐみながら答えた。




タカちゃんの部屋は12帖ワンルーム。




トイレやお風呂は玄関のほうに離れてあるけれど、台所も、ベッドも全部1つの部屋だから、冷蔵庫とかテレビとか…その他の家具で、
必要最低限の生活用品しか置いてなくてもあっという間にスペースがとられていく。





そんな中、座る場所といったら、部屋の中心に置かれてるローテーブルの周りかベッドの上に限られていて、これまでは絶対にミイの隣に座ってくれなかった。




コーヒーとか飲むときでさえ、ベッドの上で零さないように気をつけながら座って飲んでたほど徹底してた。




距離を置いて、触れないように。




こんな狭い空間で、ミイは避けられてたんだ。




なのに今は当たり前のようにミイの分のコーヒーも作ってくれて、ピッタリと体が付いても嫌がることなく隣に座ってくれてる。





そのことがただ、幸せで。ああ、ミイはタカちゃんの彼女になったんだって思ったら涙が勝手に出てきてしまう。





こうなるのは今日が初めてじゃない。




幸せだなって思う時、ついつい泣いてしまうことが何度もあった。





< 12 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop