愛のため息
ドキドキするとか、嬉しいとかそんなキモチは一切なくて。




どうせ一時の、気まぐれな感情に過ぎないんだ。




子供が戯れ程度に言っただけ。




だからといって適当に「いいよ」って言える性格でもない俺は、子供相手にはっきりと断ってしまった。




「ごめんね。彼氏にはなれない」





途端に眉が下がりキラキラした目は潤んで、泣きそうな顔をする目の前の子供。



小さな子を傷つけたという罪悪感が沸き起こるけど、相手は小学生。




ここでOKなんてしたら、近所のみならず世間の人全てに、白い目で見られるのは当然。




仕方ないじゃないかと内心ため息をつきながら、それでもこの子が泣かないようにとフォローをしていた。




「キモチは嬉しいけど、ミイちゃんがもう少し大人になって、その時まだ俺を好きだったらその時また言ってくれる?」




「……大人になったら…付き合ってくれるの?」





『うん』




大人になるまで俺を好きで居続けるなんて、到底ムリだろう。




なんて勝手に決め込んだ俺は、あっさりと頷いた。



それで泣きそうだったこの子が笑ってくれて、良かったなんてのん気に思ったりなんかして。




思えばこれが間違いで俺たちの始まりでもあった。







< 3 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop