(KS)ハルカナセカイ
「金田に子どもはいません。
佐藤には三歳になる女の子がひとりいますけれど」
風間は小さく「三歳……」と呟き、課長の顔をみる。
「課長。
例の榛瀬陽平の子どもも三歳です」
そう言ってから、答えた捜査員に向かって矢継ぎ早に質問を繰り出す。
「その女の子が通う保育園は?
母親はどんな女だ?」
急かすような風間の問いかけと凝視するような視線に、捜査員は慌てて手帳を見やる。
「ええと、S銀行近くのエンジェル保育園ですね。
母親はおりません。
子どもが産まれ、入れ替わりのように亡くなったようです」
母親がいないという言葉に、風間は軽い失望を覚えた。
佐藤の妻が親戚を名乗った女かと思ったが、宛が外れた。
保育園も全然違う場所だ。
それみろと言わんばかりの課長の視線に気付かない振りをして、風間は顎を撫でながら今まで上がった報告を検討しはじめた。
課長はそんな風間を見てぽりぽりと薄くなってきた頭を掻くと、思い出したかのように口を開いた。
「金田の女ってのは、相手わかってるのか?」