(KS)ハルカナセカイ


 八巻 優子──ゆうこ先生の自宅は、こじんまりとしたアパートだった。


 部屋からは何の物音もしない。
不在なのかまだ就寝しているのか。


 立て続けにショックを受けることがあった直後だ。
逃避のために布団にもぐっている可能性もないではない。


 もしそうなら傷心中に心苦しいとは思いつつ、風間は玄関のチャイムを鳴らした。


 二三度鳴らすと弱々しい声で誰何され、風間はドアスコープから見えるように警察手帳を見せる。


 カチャリと鍵の開く音がして、恐る恐る女性が顔を出した。


 八巻優子なのを確認し、突然の訪問を詫びる。
中に通されると、こざっぱりとした部屋に住人の性格が良く現れていると風間は感じた。


 早速ですが、と切り出し、ゆうこ先生に写真を見て貰う。
佐藤が映っているからか表情は更に暗くなり、目に涙まで浮かんでいた。

 風間は事務的に淡々と佐藤の隣にいる人物を指差し、ゆうこ先生に確認をとる。


「保育園に来たのは、この女性じゃないですか?」


 じっと指された写真の人物を見たゆうこ先生は、静かに頭を左右に振った。


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